2014年3月8日土曜日

先日のBen Horowitz氏の講演に続き、二人の講演を聞きに行ってきた。一人目がTED(ネット経由で様々な興味深い講演を見れるので、英語の勉強も含めお勧め)のファウンダーであるRichard Saul Wurman氏。もう一人がJoseph Stiglitz教授だ。何とも豪華な週である。


先ずRichard氏。会場に入ってくるなり、彼が発した第一声は

「もしも開始時間までに最前列が埋まらなければ、私はここで講演しない。」

というもの。それに加えて、

「私は興味を引かない質問には答えない。」

とも。一体どんな講演になるのだろう?と興味と不安を持ちながら対談形式の講演が始まった。対談の相手は、NHKのコロンビア白熱教室で有名なシーナ教授だ。全体として、シーナ教授の質問すらも時々遮りながら話すRichard氏は、自身の興味に従って自由に生きる起業家である、というイメージを持った。


以下、メモ。

・TEDは、私が18年間主催してきたカンファレンスから生まれてきたものだ。所謂カンファレンスのお決まりルールであった、「白人のビジネスマン」、「VIP用の席」、「CEOのスピーカー」等を無くした新しいタイプの講演だ。

・私はGame Changer(それまでの旧式ルールを変革する者)に興味をそそられる。

・期待の反対にあるものがイノベーションを生む。例えばI-phoneはイノベーションではない。あれは既にあったものを足し合わせたものだ。

・私がスピーカーを選ぶ基準はただ一つ。その人物が私の興味を引くか否かのみだ。

・学びとは貴方が興味を持ち、記憶したものだ。

・私の人生はずっとバケーションだ。何故なら、私は常に自分がしたいことだけをしているからだ。そして、私は毎日学び続けている。


物言いに癖のある人だと思ったが、一方で興味や学びに強い関心を持っており、それを軸に行動しているように思った。そして、既に80冊以上の本を出版しているらしい(!)。凄い。。。


続いて、Joseph Stiglitz教授。ノーベル経済学者として世界的に有名な氏であり、コロンビアに来て是非話を聞いてみたいと思っていたので、講演が始まるまでの間、僕は少し興奮していた。

話は分かりやすく整理されている上で、高度に知的。Stiglitz教授のスマートさに加え、プレゼン能力の高さが際立っていた。笑顔を絶やさず、時には力強く、時にはゆっくりと緩急をつけ、話は1時間半に渡って続いたが、全く飽きなかった。

今回は、彼が以前出版したPrice of Inequalityについてのものだ。

ご存知の方も多いかもしれないが、Stiglitz教授は、Adam Smithが提唱したInvisible Hands( 見えざる手)に異議を唱える人物だ。つまり、市場は個人がそれぞれの利益や興味に従った行動によって効率的に運営されるものではなく、法規制が必要だという主張だ。


今回の話も、その主張をベースにした話であった。以下、メモ。(広範囲に話が及んだため、一部は割愛している。)

・Adam Smithは自身の理論が間違いであることを知っていた。理由は、完全な競争環境というのは、つまり利益がゼロである環境であるということだからだ。そんな環境は基本的にない。

・現在の法規制は、全ての本来すべきでない行動を裁けるものではない。

・一例が、金融危機だ。銀行が複雑な商品を作り、それを理解できないでだろう教養のない人達に売りつけた結果発生した金融危機だが、これを作り出した銀行の幹部等は適切な処分を受けていない。これが業界全体の慣習となっていて、銀行全体を裁くのが大き過ぎるためだ。Wells Fargoは大量の懲罰金を支払ったが、これは結局、会社のオーナーである株主の利益を損ねているだけで、その張本人達の処罰にはなっていない。

・この問題は他の業界にも当てはまる。例えば、BPの原油流出事件があった天然資源や小売、製薬業界等だ。

・経済が成長するには、投資が必要だ。そしてその投資は、テクノロジー、教育、そしてインフラへされるべきだ。テクノロジーについては、人による労働を自動化するものではなく、地球を救うものであるべきだ。

・今回の講演を通して、私が将来のリーダーである君達に伝えたかったのは、以下の点だ。

・先ず、個人の利益ではなく、社会的なリターンが大きい選択をしなさい、ということ。こうすることで、市場がより効率的に機能するようになるだろう。次に、より慎重に考えて行動すること。最後に、自分の業界内の人物とばかり対話をするのではなく、業界外の人物からアドバイスをもらうこと。こうすることで、多くの問題発生を防げるだろう。



Richard氏とSteglitz教授は全くタイプの違う人物であったが、それぞれ学びがあり、有意義であった。特にStiglitz氏は、研究のみに長けているのではなく、話が知的に面白かった。おそらく、何らかの方法で彼の授業を受講することが可能なはずので、在学中に是非彼の授業を受講して教授との議論に参加できればと思う。


小さくて見えにくいが、前に座っている白髪の人物がRichard氏。TEDはてっきり、テックに強い若い起業家が設立したものだと思っていたので、Richard氏を見たときは正直びっくりした。

Stiglitz教授。様々な理論や仕組みを明快に次々と話していて、本当に面白い講演だった。


0 comments:

コメントを投稿